SUWAKOペディアを開催するまでの記録と当日の様子

2021年3月に開催された「SUWAKOぺディア」。今回、講師側は新型コロナウイルス感染症による対応でオンライン中継でまちあるきで現地を見ることなく参加することとなった。参加者は、中学生・高校生を含めた30名ほど。5名〜6名ごとに分かれテーブルごとに着席する形式となった。

諏訪湖創生ビジョンからウィキペディアタウンを企画する

長野県が行う諏訪湖創生ビジョンの企画として開催された今回のウィキペディアタウン。今回実施される課題意識は、ビジョンにこう明記されている。

5.4.3. 学びの推進(PDF 95ページ、文書 92ページ)のセクションには、「諏訪湖創生ビジョンでは、流域住民、県民、観光客の諏訪湖への関心を高め、諏訪湖の恵みをより多くの人たちが享受できるように、諏訪湖創生に対する気運を醸成していくことが求められています。」と課題が明言されている。その中で、20年後の目指す姿の一つに「諏訪地域はもとより、長野県内の多くの子どもたちや、観光客が諏訪湖及び流域の水環境や歴史・文化を学んでいる。」ことなどを上げ、地域の学びに限らず環境教育のフィールドにもなり得るよう計画を遂行していくとある。そして、2018年から5年間の取組には「諏訪地域をはじめ長野県内の多くの子どもたちや観光客が、諏訪湖の水環境や歴史・文化を学ぶ環境づくりを推進します。」とあり、諏訪湖の文化を学べる場づくりを含めて進めていくようだ。

https://www.pref.nagano.lg.jp/suwachi/suwachi-kikaku/vision/documents/bijon.pdf
全文については、ビジョンPDFを参照していただきたい。

講師陣も運営陣となって企画を組み立てる

諏訪湖をテーマにウィキペディアタウンを開催するという話題は、2020年1月に開催されたWikipedia LIBにさかのぼる。今回主催となった諏訪地域振興局の一職員が参加していたことが開催のきっかけとなった。

araisyohei.hatenadiary.org

実際には2021年1月に企画実施が決まったが、決定後には県立長野図書館と諏訪地域振興局と講師が数週間の頻度でオンライン会議を展開した。その間には、諏訪側でも打ち合わせと、まちあるき・編集会場の下見を実施していただいた。同時に、会場を下諏訪町図書館2階会議室にすることも併せて決定した。図書館での開催にあたっては、諏訪湖周辺の図書館3館による資料協力体制も準備してくださり、信濃毎日新聞データベース端末も当日会場に確保してくださること、レンタルのポケットWi-Fiルータも2台用意いただけることとなった。

開催の2か月前、2021年1月には地域振興局からリーフレットの校正依頼が入る。届いたPDFファイルを開けるとスペーシーなデザインをしたリーフレットが目に飛び込んできた。このデザインになった理由を伺ってみると、担当してくださっている若手男子職員のやる気と、開催地の諏訪東京理科大学に通う学生を含めた若い世代をターゲットにしているためだという。私にはないデザインセンスでうっとりしてしまった。

https://web.archive.org/web/20210521103236im_/https://www.knowledge.pref.nagano.lg.jp/images/240/suwako_wpt01.jpg

その後すぐ、1月12日に発行された長野日報と信州市民新聞(岡谷市民新聞・諏訪市民新聞・茅野市民新聞・下諏訪市民新聞・たつの新聞・みのわ新聞・南みのわ新聞)には募集開始に関する記事を掲載いただいた。プレス発表前であったが、主催側の地道な努力が実った形である。

web.archive.org

最終的に開催にあたり、障壁となったのは講師が現地レクチャーをするのかどうかであった。ちょうど緊急事態宣言が出ている状況で実質的な第2波が来ていることもあり、最終判断を行うまで、かなり悩まれたようだが、オンラインでのタウンを試す実験的な会にしたいという結論に行きついたという。

編集テーマの設定

「SUWAKOペディア」では、主催者側で設定テーマの案を6テーマ提示し、その内容を全体会で決定する運びを取った。最終的には、図書館にある資料(特に新聞や書籍、行政資料)がどの程度あるかを基準に以下のテーマとした。

  • 防災機能を持たした公園として諏訪湖畔に開設された「赤砂崎公園」。国の補助金を用いて設置されたそう。公園には防災用ヘリポート以外にも市民が集える公園としての設備が多く設置されている。
  • 31河川が流れ込んでいるが、流れ出るのは水門から天竜川に流れる「釜口水門」のみ。諏訪湖の面積に対して、流入域40倍。大雨のたびに氾濫を繰り返してきた。しゅんせつなどを進めてきたが、湖面が下がってしまうこともあり、昭和11年に水門設置で現在のものが2代目。夏場は水面を低くし下流への被害を防ぐ役割も担っている。
  • 諏訪湖の海底に沈んでいる「曽根遺跡」(「諏訪湖」の一節)
  • そして「諏訪湖の観光」(「諏訪湖」の一節)

当日はスケジュール通りにいかない

順調に行くことはなく、昼食は私と一緒に講師を務めてくださった、かんたさんのレクチャーを聞きながら進めることとなったというイレギュラーな組み合わせで進めることとなった。

予定時刻 実際時刻 内容 詳細
9:00 9:00スタッフ集合
9:40 9:40参加者集合
10:00 9:50 ガイダンス 資料説明・イベント趣旨説明
10:02諏訪湖及び諏訪湖創生ビジョンについて
10:18ウィキペディアの概略説明(あらい)
10:44まちあるきの魅力について(県立長野図書館 あさくらさん)
11:00~12:40 10:58~13:02まち歩き 諏訪湖周を大型バス移動
10:58 下諏訪文化センター出発
11:03~11:39 赤砂崎公園見学
11:50~12:10 釜口水門見学
12:35~12:50 間欠泉センター見学
13:02 下諏訪文化センター到着
12:40~13:30 13:10~ 昼食・休憩 昼食を兼ねてガイダンスを開始
13:20~13:50ウィキペディア編集のコツ(かんた)
13:50~14:14文献収集ガイダンス(あらい)
13:30~16:00 14:20~16:00文献調査・編集
16:00~16:50 16:00~17:00成果発表・講評
16:50~16:55 17:00~ まとめ 参加者感想コメント・主催者挨拶
16:55 17:04集合写真撮影
17:00 17:20終了

今回は、会場である図書館からバスに乗り、諏訪湖を1周するルートがとられた。その中で「北斎が書いた諏訪湖はこのあたりだと言われている」というお話が同行ガイドからあり、ぜひ出典を探して欲しいとのお願いを画面越しにお願いした。

自身は、上諏訪温泉で一泊したいという欲望から、自宅ではなく岡谷駅前にあるコワーキングスペースからレクチャーを中継することとした。中継は、壁に設置されたモニターにzoomの画面を映しながら、相棒の一眼レフをウェブカメラとして接続する、いわゆるワイドショー形式だ。

参加者が諏訪湖を歩いているタイミングで、まちライブラリーの提唱者である磯井さんとが来訪されて、急に私はドキドキモードに突入した。いや、このタイミングでいらっしゃるとは思っていなかったこともその理由ではある。

どのウィキペディアタウンでも起きていることではあるが、まちあるきに時間を取られてしまい、予定通り進まないというのが世の常である。今回も1時間超オーバーしてまちあるきから執筆会場に戻ってきた。バスが図書館会場に戻ってきたのは13時ごろ。かなり時間は押している状況であって、かんたさんのガイダンスは全員が昼食をとりながら開催することとなった。自身は、まちあるき中に昼食をとるために外に出ることはできなかったこともあり、参加者の昼食時間に合わせて、信州そばを食することにした。(かんたさんはこれまでに昼食を全て済ませられているそう、すごい...)


かんたさんのガイダンスはいつも通りの安定感

なぜ、かんたさんがウィキペディアに関わるようになったのか、現在は図書館に関する記事を執筆していること、ウィキペディアの記事を執筆するにあたってどんなポイントに気を付けて執筆すればいいのかを考えてほしいということを訴えた。

記事の側面から分析し、何が必要なのかを自分の頭で考えてほしい。参加者に対して、説明を通して直接的ではないものの何度も伝えていた。ゆったりとした説明は、私のワークショップとはまた違った落ち着きを感じる。

私が一番グサッと刺さったフレーズは、かんたさんが仰せになった、次のフレーズだ。

Asturio Cantabrio「そのものごとの歴史の積み重ねを明らかにし、記録していくのがウィキペディアの編集だ」

勝手ながら、次回のウィキペディアタウンでのガイダンスに使わせていただきたこうと、思っている。

最終的に出来上がった記事たち

ロマンあふれる湖底遺跡もあれば、現在の観光産業に触れた記事まで、今回は4テーマ(記事)のはずなのに、色鮮やかな印象である。当日のイベントでは、参考文献の記載方法を中心にレビューした。具体的には、句読点の前に脚注(文献情報・参照情報)を明記することや、単位を書く場合は、漢字や片仮名で表現して、テキストブラウザでも読みやすくする工夫などである。実際にイベント中に行われた編集差分は、つぎのリンクから記事をご覧いただきたい。もちろん、修正作業は編集イベントが終わった後に参加者も含めた方々が細かく編集しているので、最新版とは異なる。

ja.wikipedia.orgja.wikipedia.orgja.wikipedia.org

当日の記事など

長野県諏訪地域振興局ブログ

blog.nagano-ken.jp

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